重粒子線がん治療は、放射線治療法の一つで、炭素イオンを、加速器で光速の約70%まで加速し、がん病巣に狙いを絞って照射する最先端の放射線治療法です。

X線治療と陽子線治療の違い
従来の放射線治療で使用されるエックス線やガンマ線は、がん病巣に対して体外から照射すると、体の表面近くで放射線量が最大となり、それ以降は次第に減少していき、体の深いところにあるがん病巣に十分なダメージを与えることができません。また、がん病巣以外の正常細胞にもダメージを与えてしまいますが、重粒子線がん治療は、限局性の固形のがん治療に適しており、がんの近くにある正常な重要臓器への照射を避けることのできる治療法です。

一方、重粒子線及び陽子線は、体の表面では放射線量が弱く、がん病巣において放射線量がピークになる特性(ブラッグ・ピーク)を有しています。このため、がん病巣をピンポイントで狙いうちすることができ、がん病巣にダメージを十分与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能です。
特に重粒子線は、陽子線よりもさらに線量集中性が優れ、がん細胞に対する殺傷効果が2~3倍大きいとされているため、照射回数をさらに少なく、治療期間をより短くすることが可能です。

重粒子線治療適応となる共通の条件
重粒子線治療は体に負担が少ない低侵襲な治療のため、高齢者、体力に不安のある方、持病のある方でも治療の対象となります。しかし、全ての病状に対して行える治療法ではありません。
重粒子線治療の適応となる共通の条件として、以下の項目を満たすことが必要であることをご理解ください。
- 病巣(がん)が限局し、広範囲でないこと
- 治療対象部位に、放射線治療を受けていないこと
- 30分間程度安静な状態で横になっていられること
- 治療開始時のPS(Performance Status)が0-2(KI60以上)であること
- 照射予定領域に活動性で難治性の感染症を有しないこと
- がんの告知を受け、重粒子線治療を自らの意思で希望していること
なお重粒子線治療の適応は、専門医による総合的な判断を必要とします。受診後の検討(キャンサーボード)の結果、重粒子線治療の適応とならない場合もあります。
重粒子線で治療できるがん

重粒子線がん治療は、限局性の固形のがん治療に適しています。
また、がんの近くにある正常な重要臓器への照射を避けることのできる治療法です。
※詳しくは医療機関にご確認ください。