次世代放射線治療装置トモセラピー(TomoTherapy)も世界的に注目されている治療器です。このメカニズムは放射線照射装置をヘリカルCTの原理を応用し、放射線ビームを螺旋状に回転させながら患部のみ正確に照射することを可能にしたものです。この装置はピンポイント照射が可能だけでなく、複雑な病巣や一度に複数の腫瘍に対応できるというメリットがあります。

"切らずにくり抜く、ピンポイント放射線治療"
トモセラピーとは、強度変調放射線治 療(IMRT)の専用機として米国で開発された最新の放射線 治療システムです。
IMRTとは、がんの部分のみにピンポイントで放射線を集中させる新技術の一つで、様々な方向から照射し、放射線の強さに濃淡をつけ、あたかもがんの部分だけをくりぬくような照射ができるようになりました。つまり、がんの部分にはたっぷり放射線をあて、がんではない正常部分には極力放射線をあてないという、従来不可能とされてきたことを可能にした、画期的な治療技術です。従来の照射方法に代わる標準的治療法として、前立腺癌や脳腫瘍など、多くの悪性腫瘍でその有効性が示されています。

従来型の放射線治療 直腸など正常組織にもたくさんの放射線が照射されてしまう。

トモセラピーでの強度変調放射線治療(IMRT) あらゆる方向から放射線をピンポイントで標的(癌の場所)に照射。放射線にメリハリをつけるこで、正常組織(直腸など)への放射線被曝を最小限に抑えます。
"全身の悪性腫瘍に威力を発揮"
これまでトモセラピーが威力を発揮するがんとして、前立腺がんと脳腫瘍が挙げられていました。
たとえば前立腺がんでは、完治には72グレイ(グレイとは照射量の単位です。)以上の高い放射線線量を投与することが推奨されてきましたが、標的である前立腺や精嚢の近くには直腸があるため、ふつうの放射線治療では副作用が出やすくなります。IMRTの技術を使うと、直腸を避けながら前立腺がんに大量の放射線を照射することが可能になり、治療効果は高まり、副作用はむしろ減らすことが可能となっています。
前立腺がん以外にも、脳腫瘍や骨の腫瘍等、全身の悪性腫瘍に対して有効性が確認され、2009年4月からは、全身の悪性腫瘍に対する保険適応も認められるようになりました。東京の江戸川病院ではこれまで、前立腺がん、脳腫瘍、骨腫瘍、乳がん、肺がん、肝臓がん等、全身の悪性腫瘍に対しトモセラピーによるIMRTを行っておられます。